近年、マラソンやトライアスロンなどの持久系競技で注目されているのがZone2トレーニングです。
トップランナーやトップサイクリストがトレーニングの大部分を低強度で行っていることから、多くの市民ランナーにも広がっています。
しかし、
- ただゆっくり走ればいいのか
- ウォーキングでもいいのか
- なぜ低強度で速くなるのか
と疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
今回はZone2トレーニングの意味と、なぜLT1付近の運動強度が持久力向上に効果的なのかを解説します。
Zone2とは何か
Zone2とは心拍数や運動強度を区分したトレーニングゾーンのひとつです。
細かな定義は流派によって異なりますが、多くの場合はLT1付近からその少し下の強度を指します。
心拍数で表すと、一般的には最大心拍数の60〜75%程度、カルボーネン法では予備心拍数の60〜70%程度が目安とされています。
たとえば僕の場合だと、計算や実際のトレーニング時の心拍数の推移から、最大心拍数は175〜180bpm程度と推測しています。
仮に最大心拍数を175bpmとすると、Zone2の目安は次のようになります。
- 60%:105bpm
- 70%:123bpm
- 75%:131bpm
実際に僕が普段行っている低強度ランニングも、おおむね110〜130bpm程度の範囲に収まっています。
もちろん心拍数だけでZone2を正確に判定することはできませんが、ひとつの目安としては十分活用できます。
ただし個人差が大きいため、心拍数だけで正確に判断することは難しく、より厳密にはLT1付近を基準に考えるのが理想です。
前回の記事で解説したように、LT1は乳酸濃度が安静時レベルからわずかに上昇し始めるポイントです。
この強度では乳酸の産生と処理のバランスが保たれており、長時間運動を継続できます。
会話も比較的楽にできる強度であり、「きつくないけれど運動している」と感じる程度が目安です。
なぜZone2が注目されているのか
Zone2は派手なトレーニングではありません。
インターバル走のような強い達成感もありません。
しかし、多くの研究で持久力向上に重要な適応を引き起こすことが示されています。
その理由は、身体への負担を抑えながら有酸素能力を高められるからです。
高強度トレーニングは強い刺激を与えられますが、その分回復にも時間が必要です。
一方でZone2は比較的回復しやすく、トレーニング量を積み上げやすいという特徴があります。
Zone2で起こる身体の変化
ミトコンドリアが増える
ミトコンドリアは酸素を利用してエネルギーを作る工場のような存在です。
Zone2トレーニングでは、このミトコンドリアへの刺激が継続的に加わります。
その結果、筋肉はより効率よく酸素を利用できるようになります。
毛細血管が発達する
毛細血管は酸素や栄養を筋肉へ届けるための通り道です。
Zone2を継続すると毛細血管密度の向上が期待できます。
これにより酸素供給能力が高まり、有酸素能力の向上につながります。
脂質代謝能力が向上する
Zone2では糖質だけでなく脂質も積極的に利用されます。
そのため脂肪をエネルギーとして利用する能力が高まりやすい強度です。
マラソン後半の失速対策としても重要な適応です。
乳酸処理能力が向上する
LT1付近では乳酸が少量ずつ作られています。
その乳酸を再利用しながら運動することで、乳酸を処理する能力も向上していきます。
結果としてLT1やLT2の向上につながります。
なぜLT1付近が効率的なのか
運動強度が低すぎる場合、身体への刺激が不足します。
反対に高すぎる場合は回復コストが大きくなります。
LT1付近はその中間に位置しています。
十分な有酸素刺激を与えながら、疲労を過度に蓄積しにくい強度なのです。
そのため長時間継続でき、総トレーニング量を増やしやすくなります。
これがZone2トレーニングが高く評価される理由のひとつです。
Zone2だけで速くなれるのか
結論から言えば、Zone2だけでは限界があります。
持久力の土台作りには非常に優れていますが、高強度への適応は別に必要です。
実際の競技力は、
- VO2max
- 乳酸閾値(LT)
- ランニングエコノミー
の組み合わせで決まります。
Zone2はその土台を作る役割を担っています。
そしてその上にテンポ走やインターバル走を積み重ねることで、より高い競技力へつながります。
トップ選手も低強度を重視している
持久系競技のトップ選手は、トレーニング時間の70〜90%を低強度で行うことが珍しくありません。
これは「楽をしている」のではなく、有酸素能力の土台を最大限に発達させるためです。
高強度ばかりでは疲労が蓄積し、継続的なトレーニングが難しくなります。
一方で低強度を中心に据えることで、長期間にわたって大量のトレーニングを積み重ねることができます。
結果として、VO2max、LT、ランニングエコノミーの向上につながるのです。
Zone2と心拍数の関係
Zone2を心拍数で管理する場合、多くのランナーでは最大心拍数の60〜75%程度が目安になります。
ただし個人差が大きいため、心拍数だけで判断するのは難しい場合があります。
より正確にはLT1付近を基準に設定するのが理想です。
会話が比較的楽にできる強度であることも重要な目安になります。
まとめ
Zone2トレーニングとは、LT1付近で行う低強度トレーニングです。
この強度では乳酸の蓄積が少なく、長時間運動を継続できます。
また、
- ミトコンドリアの増加
- 毛細血管の発達
- 脂質代謝能力の向上
- 乳酸処理能力の向上
といった持久力の土台となる適応を促します。
Zone2は派手なトレーニングではありません。
しかし、VO2max、LT、ランニングエコノミーを支える基礎工事として非常に重要です。
トップ選手が低強度トレーニングを重視する理由も、まさにここにあります。
速く走るためには速く走る練習だけではありません。
ゆっくり走る能力を高めることが、結果として速く走る能力を押し上げるのです。
参考文献
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