ミトコンドリアが増えると何が変わるのか?持久力との関係を解説

ランニング

ランニングや持久系スポーツについて調べていると、

「ミトコンドリアを増やそう」

という言葉をよく見かけます。

特にZone2トレーニングや低強度トレーニングの効果として、ミトコンドリアの増加が頻繁に挙げられます。

しかし、

  • ミトコンドリアとは何なのか
  • 増えると何が変わるのか
  • なぜ持久力向上につながるのか

を詳しく理解している人は意外と多くありません。

今回はミトコンドリアの役割と、持久力との関係について解説します。

ミトコンドリアとは何か

ミトコンドリアは細胞の中に存在する小さな器官です。

しばしば「細胞の発電所」と表現されます。

私たちが走ったり歩いたりできるのは、ATP(アデノシン三リン酸)というエネルギーを利用しているからです。

そして、そのATPを大量に生産している場所がミトコンドリアです。

酸素を利用して糖質や脂肪からエネルギーを取り出す有酸素代謝の中心がミトコンドリアなのです。

ミトコンドリアが少ないとどうなるのか

ミトコンドリアが少ない状態では、酸素を利用したエネルギー生産能力が低くなります。

その結果、

  • すぐ息が上がる
  • 疲れやすい
  • 脂肪を使いにくい
  • 乳酸が溜まりやすい

といった状態になりやすくなります。

つまり持久力競技においては不利になります。

ミトコンドリアが増えると何が変わるのか

疲れにくくなる

ミトコンドリアが増えると、同じ運動強度でもより多くのATPを作れるようになります。

その結果、身体は余裕を持って運動を継続できるようになります。

つまり疲れにくくなります。

脂肪をエネルギーとして使いやすくなる

脂肪は大量のエネルギーを持っています。

しかし脂肪を利用するには酸素とミトコンドリアが必要です。

ミトコンドリアが増えることで脂肪利用能力が向上し、長時間運動に有利になります。

この仕組みはFATmaxとも深く関係しています。

FATmaxについては以下の記事で詳しく解説しています。

FATmaxとは?脂肪燃焼が最大になる強度を解説

乳酸が溜まりにくくなる

乳酸は単なる疲労物質ではありません。

実際には重要なエネルギー源でもあります。

ミトコンドリアが増えると、乳酸を再利用する能力も向上します。

その結果、LT1やLT2の向上につながります。

回復力が向上する

エネルギー供給能力が高まることで、トレーニング後の回復も効率化されます。

そのため継続的なトレーニングが行いやすくなります。

実際の研究では何が起きているのか

持久系トレーニングによるミトコンドリアの増加は数多くの研究で確認されています。

有名な研究としてHolloszyの実験があります。

ラットに持久系トレーニングを実施したところ、筋肉内のミトコンドリア関連酵素活性が大幅に向上しました。

この研究は、持久系トレーニングによって筋肉が有酸素運動に適応することを示した代表的な研究として知られています。

その後の研究でも、人間を対象とした持久系トレーニングによってミトコンドリア量やミトコンドリア機能が向上することが繰り返し報告されています。

なぜZone2でミトコンドリアが増えるのか

ここで重要になるのがZone2トレーニングです。

Zone2はLT1付近の低強度帯であり、乳酸の蓄積を抑えながら長時間運動を継続できます。

この強度では筋肉は酸素を利用したエネルギー生産を続けるため、ミトコンドリアへの刺激が長時間維持されます。

結果としてミトコンドリアの増加や機能向上につながると考えられています。

Zone2については以下の記事で詳しく解説しています。

Zone2トレーニングとは?なぜLT1付近が持久力向上に効果的なのか

ミトコンドリアはVO2maxやLTにも関係する

ミトコンドリアは単独で存在する能力ではありません。

VO2max、LT、ランニングエコノミーなど、多くの持久力要素の土台になっています。

ミトコンドリアが増えることで酸素利用能力が向上し、同じ酸素摂取量でもより多くのエネルギーを生み出せるようになります。

その結果として、

  • VO2max向上
  • LT向上
  • 脂質代謝能力向上
  • ランニングエコノミー改善

につながる可能性があります。

まとめ

ミトコンドリアは細胞内でエネルギーを生み出す発電所です。

そして持久力競技においては、酸素を利用したエネルギー生産の中心となる存在です。

ミトコンドリアが増えることで、

  • 疲れにくくなる
  • 脂肪を使いやすくなる
  • 乳酸処理能力が向上する
  • 回復力が高まる

といった変化が起こります。

そのため持久力向上の土台として非常に重要です。

Zone2トレーニングや低強度トレーニングが重視される理由も、ミトコンドリアへの刺激を効率よく積み重ねられるからです。

速く走るためには高強度トレーニングだけではなく、まずはエネルギーを作り出す土台を育てることが重要なのです。

参考文献

  • Holloszy JO. Biochemical adaptations in muscle. Effects of exercise on mitochondrial oxygen uptake and respiratory enzyme activity. Journal of Biological Chemistry. 1967.
  • Holloszy JO, Coyle EF. Adaptations of skeletal muscle to endurance exercise and their metabolic consequences. Journal of Applied Physiology. 1984.
  • Granata C, Jamnick NA, Bishop DJ. Principles of Exercise Prescription, and How They Influence Exercise-Induced Changes of Transcription Factors and Other Regulators of Mitochondrial Biogenesis. Sports Medicine. 2018.
  • Brooks GA. The Science and Translation of Lactate Shuttle Theory. Cell Metabolism. 2018.
  • Joyner MJ, Coyle EF. Endurance Exercise Performance: The Physiology of Champions. Journal of Physiology. 2008.
  • Jones AM, Carter H. The Effect of Endurance Training on Parameters of Aerobic Fitness. Sports Medicine. 2000.

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