はじめに
ランニングやスポーツ栄養学について調べていると、「筋グリコーゲン」という言葉をよく目にします。
糖質補給の話でも出てきますし、マラソンや持久系競技の解説でも頻繁に登場します。
しかし実際のところ、筋グリコーゲンとは何なのでしょうか。
名前は知っていても、「糖質と何が違うのか」「なぜランナーに重要なのか」までは分からない人も多いと思います。
実は筋グリコーゲンは、ランナーにとっての燃料タンクのような存在です。
そして脚の重さや疲労感、パフォーマンス低下とも深く関係しています。
今回は糖質と筋グリコーゲンの関係について、研究データを交えながら解説していきます。
筋グリコーゲンとは何か
筋グリコーゲンとは、筋肉の中に蓄えられている糖質のことです。
私たちが食事から摂取した糖質は消化されてブドウ糖になります。
そのブドウ糖の一部が筋肉内に貯蔵されたものが筋グリコーゲンです。
ランニング中、身体は必要に応じてこの筋グリコーゲンを取り出し、エネルギーとして利用します。
自動車で例えるなら、筋グリコーゲンはガソリンタンクです。
ガソリンが少なくなれば車が走れなくなるように、筋グリコーゲンが不足するとランニングパフォーマンスは低下します。
糖質はどのように筋グリコーゲンになるのか
私たちが食べるお米やパン、麺類などの炭水化物は、最終的にブドウ糖へ分解されます。
その後、血液中へ吸収されて各組織へ運ばれます。
流れを簡単に表すと次のようになります。
お米・パン・麺類
↓
炭水化物
↓
ブドウ糖
↓
筋肉へ取り込み
↓
筋グリコーゲンとして貯蔵
つまり筋グリコーゲンの材料は糖質です。
糖質を摂取しなければ、筋グリコーゲンを十分に補充することもできません。
そのため持久系競技では糖質摂取が非常に重要になります。
筋グリコーゲンと肝グリコーゲンの違い
グリコーゲンには大きく分けて2種類あります。
| 種類 | 保管場所 | 主な役割 |
|---|---|---|
| 筋グリコーゲン | 筋肉 | 筋肉を動かす燃料 |
| 肝グリコーゲン | 肝臓 | 血糖値維持 |
筋グリコーゲンは、その筋肉自身でしか使えません。
脚に蓄えられた筋グリコーゲンは脚のために使われます。
一方で肝グリコーゲンは血液中へブドウ糖を放出し、脳や全身へエネルギーを供給します。
朝食を抜いたときにぼんやりしたり、長時間運動で集中力が低下したりするのは、肝グリコーゲンが関係していることがあります。
ランニング中は何が起きているのか
ランニング中、身体は脂質と糖質を同時に利用しています。
近年人気のZone2トレーニングでは脂質利用率が高まります。
しかし脂質だけで走っているわけではありません。
Zone2でも筋グリコーゲンは継続的に消費されています。
そして運動強度が高くなるほど、筋グリコーゲンへの依存度は高くなります。
| 運動強度 | 筋グリコーゲン利用 |
|---|---|
| ウォーキング | 少ない |
| Zone2 | 中程度 |
| テンポ走 | 多い |
| インターバル | 非常に多い |
つまり低強度ランニングであっても、筋グリコーゲンは少しずつ減っていくのです。
筋グリコーゲンはどれくらい蓄えられるのか
一般成人では筋グリコーゲンとしておよそ300〜500g程度が蓄えられていると考えられています。
トレーニングを積んだ持久系アスリートではさらに多く蓄えられることがあります。
筋グリコーゲン1gあたり約4kcalなので、
400gの場合は約1,600kcal分のエネルギーになります。
数字だけを見ると多く感じますが、マラソンや長時間ランニングでは決して余裕のある量ではありません。
そのためランナーは日々の食事によって筋グリコーゲンを補充する必要があります。
研究① 筋グリコーゲンが減ると持久力は低下する
筋グリコーゲン研究で有名なのが、Bergströmらによる研究です。
研究では筋生検という方法を用いて、実際に筋肉の一部を採取し、筋グリコーゲン量を測定しました。
そして運動前後で筋グリコーゲン量と持久力の関係を調査しました。
結果として、筋グリコーゲンが少ない状態では持久運動能力が低下することが確認されました。
筋グリコーゲン量は持久力と密接に関係している。
この研究は現在でもスポーツ栄養学の基礎となっています。
研究② 筋グリコーゲン量とパフォーマンスの関係
近年のスポーツ栄養学では、Burkeらによるレビュー研究が広く引用されています。
この研究では持久系競技における糖質利用や筋グリコーゲンの役割について、多数の研究結果を分析しています。
その結果、筋グリコーゲン量は持久系パフォーマンスと強い関連があることが確認されました。
筋グリコーゲンが十分に蓄えられている状態では、長時間にわたって安定した運動を継続しやすくなります。
一方で筋グリコーゲンが不足すると、同じペースでも疲労感が増し、持久力が低下する傾向がみられました。
ランナーにとって筋グリコーゲンは単なるエネルギー源ではなく、パフォーマンスそのものを支える重要な燃料タンクである。
これはトップアスリートだけでなく、市民ランナーにも当てはまります。
糖質不足になるとどうなるのか
筋グリコーゲンの材料は糖質です。
そのため糖質摂取量が不足すると、筋グリコーゲンも十分に補充できなくなります。
すると身体にはさまざまな変化が現れます。
- 脚が重く感じる
- 走り始めがだるい
- 疲労感が抜けない
- ペースが上がらない
- 回復が遅れる
- 長時間走れない
もちろんこれらの原因は糖質不足だけではありません。
睡眠不足や精神的ストレス、筋疲労なども関係します。
しかし糖質不足による筋グリコーゲン低下も、見落とされやすい原因のひとつです。
特に減量中のランナーは、意識的にお米やパンを減らしていることが多いため注意が必要です。
僕の場合を考えてみる
僕は現在88kg前後で、週4〜6回ほど60〜90分の低強度ランニングを行っています。
最近はトレーニング時間も増え、60分走が当たり前になってきました。
一方で食事内容を振り返ると、
- 朝:食べないことが多い
- 昼:軽め
- 夜:お米1合程度
という日も少なくありません。
減量も同時進行しているため、摂取カロリーは比較的控えめです。
その結果、最近感じていた
- 脚の重さ
- 走り出しの倦怠感
- 階段のしんどさ
- なんとなく走る気にならない日
といった感覚は、単純な疲労だけでなく筋グリコーゲン不足も関係しているのかもしれません。
もちろん現時点では推測に過ぎません。
しかしスポーツ栄養学の観点から考えると、十分にあり得る仮説です。
今後は糖質摂取量を少し増やしながら、身体の反応を観察してみたいと思います。
筋グリコーゲンを増やすにはどうすればいいのか
筋グリコーゲンを増やすために最も重要なのは糖質摂取です。
お米、パン、麺類、果物などから十分な糖質を摂取することで、筋グリコーゲンは補充されます。
また運動後は筋肉が糖質を取り込みやすい状態になるため、回復のためにも糖質補給が重要になります。
ただし、どれくらいの時間で回復するのか、どれくらいの糖質が必要なのかは別の話です。
ここはランナーにとって非常に重要なポイントなので、次回の記事で詳しく解説したいと思います。
まとめ
筋グリコーゲンとは、筋肉に蓄えられた糖質です。
ランナーにとっては燃料タンクのような存在であり、走るための重要なエネルギー源になります。
糖質を摂取することで筋グリコーゲンは補充され、ランニング中に消費されます。
そして筋グリコーゲンが不足すると、脚の重さや疲労感、パフォーマンス低下につながる可能性があります。
近年は脂肪燃焼や糖質制限が注目されることもありますが、持久系スポーツにおいて糖質は依然として重要な役割を担っています。
ランナーにとって糖質は敵ではなく、走るための燃料です。
次回は「筋グリコーゲンは何時間で回復するのか」について解説します。
参考文献
-
Bergström J, Hermansen L, Hultman E, Saltin B.
Diet, Muscle Glycogen and Physical Performance.
The number of catecholamine storage granules in adrenal glands - PubMedThe number of catecholamine storage granules in adrenal glands -
Burke LM et al.
Carbohydrates for Training and Competition.
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Thomas DT, Erdman KA, Burke LM.
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