疲労はその日に来るとは限らない|昨日は元気だったのに今日は走れない理由

疲労はその日に来るとは限らない|昨日は元気だったのに今日は走れない理由 ランニング

ランニングを続けていると、不思議な体験をすることがあります。

昨日は気持ちよく走れていたのに、今日はなぜか身体が重い。

脚が動かない。

心肺機能は問題なさそうなのに、とにかくしんどい。

そんな経験をしたことがある人は多いのではないでしょうか。

僕はまあまあ頻繁にあります。つい先日にもありました。それほど強いトレーニングをしていないにもかかわらず、走れなくて帰って食べて寝たという流れです。

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トレーニングによる疲労は、その日のうちに現れるとは限りません。

むしろ運動による影響が24〜72時間後に現れることは珍しくなく、スポーツ科学でもよく知られている現象です。

今回は「疲労は遅れてやってくる」というテーマについて解説します。

疲労はその日に現れるとは限らない

運動による疲労というと、走った直後や当日に感じるものだと思われがちです。

しかし身体の中では、運動が終わったあともさまざまな反応が続いています。

筋肉の修復。

エネルギーの補充。

神経系の回復。

ホルモンバランスの調整。

こうした反応は数時間から数日かけて進行します。

そのため、昨日は元気だったのに翌日や翌々日になって急に身体が重くなることがあるのです。

特にランニングのような持久系スポーツでは、疲労が蓄積しながら少しずつ表面化することがあります。

実際に高強度トレーニングの翌日は問題なく動けても、2日後になって脚が鉛のように重く感じることがあります。

これは気合いや根性の問題ではなく、身体が負荷に反応している結果です。

遅れて現れる疲労の正体

疲労が遅れて現れる理由はひとつではありません。

いくつかの要素が重なり合って起こります。

筋損傷と炎症反応

ランニングでは筋肉に小さな損傷が発生します。

これは悪いことではなく、身体が強くなるために必要な刺激です。

しかし損傷した筋肉を修復するためには炎症反応が必要になります。

この炎症反応は運動直後に最大になるわけではありません。

数時間から1〜2日かけて強くなることがあります。

そのため運動当日は平気でも、翌日や翌々日に脚が重く感じたり筋肉痛が強くなったりします。

いわゆる遅発性筋肉痛(DOMS)もその代表例です。

グリコーゲン回復の遅れ

ランニングでは筋肉内に蓄えられたグリコーゲンが消費されます。

グリコーゲンは筋肉にとって重要な燃料です。

十分な糖質を摂取したとしても、完全な回復には時間がかかります。

さらに仕事や家事などの日常生活でもエネルギーは消費され続けます。

自分では回復しているつもりでも、実際にはまだエネルギー不足だったということもあります。

特に減量中のランナーはこの影響を受けやすくなります。

体重は順調に減っていても、利用可能エネルギーが不足しているとパフォーマンスは大きく低下します。

自律神経の疲労

疲労というと筋肉ばかりに注目しがちですが、神経系も疲労します。

運動中は交感神経が活発になり、身体を戦闘モードへ切り替えています。

運動当日はアドレナリンなどの影響で元気に感じることもあります。

しかしその反動が翌日以降に現れることがあります。

寝ても疲れが取れない。

朝から身体が重い。

安静時心拍数が高い。

こうした状態は自律神経の回復が追いついていない可能性があります。

中枢性疲労

疲労には筋肉そのものの疲労だけではなく、脳や神経の疲労もあります。

これを中枢性疲労と呼びます。

身体を守るために脳が意図的に出力を制限する現象です。

筋肉にまだ余力があっても、脳が危険を察知すると身体は動きにくくなります。

その結果として、心肺には余裕があるのに脚だけが動かないという感覚が生まれることがあります。

ランナーがよく言う「脚が売り切れた感じ」という表現の一部は、この中枢性疲労によって説明できる可能性があります。

フィットネス・疲労モデルという考え方

スポーツ科学ではフィットネス・疲労モデルという考え方があります。

これはトレーニングを行うと、身体能力の向上(フィットネス)と疲労の両方が同時に発生するという理論です。

しかし、この2つは同じ速度で変化するわけではありません。

一般的には疲労の方が大きく、そして早く現れます。

そのためトレーニング直後は身体能力が向上しているにもかかわらず、パフォーマンスは低下して見えることがあります。

その後、疲労が抜けることで本来獲得していた能力向上が表面化します。

つまりトレーニングをした翌日に調子が悪いことは、必ずしも失敗ではありません。

むしろ適応の途中段階である可能性があります。

逆に疲労が抜ける前にさらに強い刺激を繰り返してしまうと、パフォーマンスは低下し続けます。

これがオーバーリーチングやオーバートレーニングの入り口になります。

超回復との違い

疲労が遅れて現れることと、超回復は混同されることがあります。

しかし厳密には少し意味が異なります。

超回復とは、トレーニングによって一度低下した能力が回復を経て以前より高いレベルになる現象を指します。

一方で疲労の遅延は、単純に身体がダメージやストレスへの反応を後から示している状態です。

疲労が遅れて現れたからといって、必ず超回復が起きるわけではありません。

適切な栄養、睡眠、回復期間があって初めて身体能力の向上につながります。

疲労だけを積み重ねても強くなるとは限らないということです。

遅発性筋肉痛(DOMS)との関係

疲労が遅れて来る現象として最も有名なのが遅発性筋肉痛です。

英語ではDelayed Onset Muscle Soreness、略してDOMSと呼ばれます。

一般的には運動後12〜24時間ほどで現れ始め、24〜72時間程度でピークを迎えることが多いとされています。

特に下り坂や筋力トレーニングなど、筋肉が引き伸ばされながら力を発揮する伸張性収縮では起こりやすい傾向があります。

ランニングでは下り坂やスピード練習の翌日に強く感じることがあります。

ただし筋肉痛がないから疲労がないとは限りません。

神経系の疲労やエネルギー不足は筋肉痛を伴わずに現れることもあります。

筋肉痛だけを疲労の指標にするのは危険です。

HRVで見える「隠れ疲労」

近年ではランニングウォッチによってHRV(心拍変動)を測定できるようになりました。

HRVとは心拍と心拍の間隔の揺らぎのことです。

一般的にはHRVが高いほど回復状態が良く、低いほどストレスや疲労が大きい傾向があります。

面白いことに、主観的には元気でもHRVだけが低下していることがあります。

こうした状態では本人が気付かないまま疲労を抱えている場合があります。

逆に少し脚が重く感じてもHRVが安定していれば問題なく走れることもあります。

もちろんHRVだけですべてを判断することはできません。

しかし安静時心拍数や睡眠時間と組み合わせることで、疲労管理の有力な材料になります。

ランナーが勘違いしやすいこと

疲労が遅れて現れることを知らないと、調子が良かった翌日にさらに追い込んでしまうことがあります。

昨日は元気だった。

今日も元気そうだ。

だからさらに走ろう。

こうして負荷を積み重ねた結果、数日後に一気に疲労が噴き出すことがあります。

実際には身体が適応するための回復期間も必要です。

そのため短期的な調子だけではなく、数日単位で身体の状態を見ることが大切になります。

疲労は見えない。

そして必ずしも今日の練習の結果として現れるわけでもない。

今感じている疲労は、2〜3日前のトレーニングや生活習慣の結果かもしれない。

だからこそランナーは今日だけではなく、数日単位で身体を見る必要がある。

疲労を見抜くためのヒント

疲労は主観だけでは判断が難しいことがあります。

そのため以下のような指標を参考にすると役立ちます。

  • 安静時心拍数
  • HRV(心拍変動)
  • 睡眠時間と睡眠の質
  • 起床時の疲労感
  • ウォーミングアップ時の身体の軽さ
  • 普段のペースに対する心拍数の変化

特に普段より心拍数が高いのにペースが上がらない場合は、回復不足のサインである可能性があります。

逆に脚が少し重くても心拍数や睡眠状態が良好なら、単なる一時的な張りであることもあります。

まとめ

ランニングによる疲労は必ずしもその日に現れるわけではありません。

筋損傷、炎症反応、エネルギー不足、自律神経の疲労、中枢性疲労などが時間差で現れることがあります。

そのため「昨日は元気だったのに今日は走れない」という現象は決して珍しいことではありません。

むしろ継続的にトレーニングをしているランナーなら誰でも経験する可能性があります。

大切なのは、その日の感覚だけで判断しないことです。

疲労は遅れてやってくる。

そう考えて中長期で身体を観察することが、長く故障なく走り続けるためのコツであるといえます。

参考文献

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